勝瑞城跡の北西には細川氏・三好氏ゆかりの持明院があったと考えられています。この地に2基の石造物があり、大正7年、ここから50m西の畑から出土したとの記録が残されていますが、誰のものかは明らかになっていません。右の五輪塔は室町時代前期のものとされ、讃岐津田の火山石(ひやまいし)作られています。左の宝篋印塔も、室町時代前期のものとされ、砂岩製です。塔身の四面に仏座像が彫られています。2基とも町有形文化財に指定されています。
後ろには日亜の工場が見えています。そのすぐ北側は旧吉野川が流れています。
勝瑞城保存会による勝瑞城三代城主細川詮春?の名が刻まれた石板もあります。
南を臨む。奥に見えるのが勝瑞城跡です。五輪塔・宝篋印塔は勝瑞城跡北西に位置しています。
こちらの宝塔も室町前期の製作と考えられています。伝持明院跡の五輪塔と同じく火山石で作られています。同地にある石地蔵も同時代のもので優品です。板碑も2基あります。
地福寺は馬木にあるお寺です。文治年間(1185-1190)の創建とされており、現在は真言宗のお寺です。境内の左手奥には細川氏の供養塔とも伝えられる小さな五輪塔があります。永正18年(1521年)の銘が入っているそうです。阿波細川家から室町幕府の管領となった細川澄元や三好之長と同じ時代に活躍した典厩家(てんきゅうけ:右馬頭)当主細川澄賢(すみかた)の供養塔と考えられています。細川澄賢は、南陽神社ゆかりの武将と伝わっています。
五輪は下から「地・水・火・風・空」を表します。梵字が刻まれています。風・空の石は新しいものです。
肩が水平に張った石地蔵もあります。室町時代のものと考えられています。
地福寺全景。近年、新しく建てられました。
濠や土塁が残っています。現在は臨済宗の竜音山見性寺が建てられています。土塁の上には、矢竹が植えられています。土塁に散見される以前の見性寺の軒丸瓦には、三好氏の家紋三階菱があしらわれています。
新しくなった見性寺
水をたたえる濠
土塁西側
土塁上の矢竹。弓矢の矢の材料となります。
三階菱は「王」の文字に由来するそうです。小笠原氏の家紋でもあります。
見性寺の境内には三好家四代の墓と伝えられている五輪塔と宝篋印塔があります。
(左から長治・その父の実休・祖父の元長・曾祖父?の之長)
こちらも新しく整備されました。
見性寺の南東にある観音寺境内には、池を掘った時に出土したと伝わる人物石像があります。
顔立ちが西洋系に見えることから、ポルトガル宣教師やキリシタンとの関りがあったとする異説もあります。
勝瑞城館跡から南に向かうと阿弥陀橋があります。そのたもとに、板碑が祀られています。この板碑は室町時代のもので、緑色片岩にキリーク(阿弥陀種子)を刻んでいます。板碑は逆修や供養のために主に中世の武士が建てたと考えられています。
番号 | 寺院名 | よみ | 貫 | 備考 |
---|---|---|---|---|
1 | 持明院 | じみょういん | 18貫 | 現在:徳島市寺町天理教徳島寮 七堂伽藍 |
2 | 春日寺 | かすがじ | 13貫 | 現在:徳島市寺町常慶院・春日神社 |
3 | 正貴寺 | しょうきじ | 20貫? | 正喜地の地名が残る。 七堂伽藍 |
4 | 妙蓮寺 | みょうれんじ | 7貫 | |
5 | 瑞川院 | ずいせんいん | 20貫 | |
6 | 瑞岩寺 | ずいがんじ | 11貫 | 現在:徳島市新町瑞巌寺 |
7 | 圓徳寺 | えんとくじ | 8貫 | 現在:徳島市寺町円徳寺 |
8 | 東光寺 | とうこうじ | 13貫 | 現在:徳島市寺町東光寺 |
9 | 安楽寺 | あんらくじ | 13貫 | |
10 | 東宗院 | とうしゅういん | 10貫 | 現在:徳島市寺町東宗院 |
11 | 源國寺 | げんこくじ | 20貫 | 現在:徳島市寺町還国寺 |
12 | 明正寺 | みょうしょうじ | 13貫 | |
13 | 浄智寺 | じょうちじ | 14貫 | 現在:徳島市寺町浄智寺 |
14 | 蓮華寺 | れんげじ | 15貫 | |
15 | 般若院 | はんにゃいん | 5貫 | 現在:徳島市寺町般若院 |
16 | 妙典寺 | みょうてんじ | 7貫 | |
17 | 林光寺 | りんこうじ | 8貫 | |
18 | 能正寺 | のうしょうじ | 10貫 | |
19 | 貴明院 | きみょういん | 10貫 | |
20 | 長善寺 | ちょうぜんじ | 7貫 | 現在:徳島市寺町長善寺 |
21 | 光明院 | こうみょういん | 5貫 | |
22 | 西光寺 | さいこうじ | 5貫 | |
23 | 長尾寺 | ながおじ | 13貫 | |
24 | 小川寺 | おがわじ | 8貫 | |
25 | 小篠寺 | おざさじ | 7貫 | |
26 | 観音寺 | かんおんじ | 8貫 | 現存 |
27 | 見性寺 | けんしょうじ | 18貫 | 現存 |
※1貫は、2石と換算されることが多い。
また、町内にある2つの寺の記録もあります。
番号 | 寺院名 | よみ | 貫 | 備考 |
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1 | 福成寺 | ふくじょうじ | 20貫 | 住吉神社別当七堂伽藍 |
2 | 梅の寺 | うめのてら | 徳命千光寺 |
国史跡勝瑞城館跡
堀跡が再現されています。
会所も再現されました。
資料展示室
国史跡勝瑞城館跡には、発掘調査で見つかった遺物と遺構の資料が展示されています。
続日本の城100選にも選ばれました。
勝瑞城跡からの出土品
かわらけ・漆器・輸入陶磁器など
刀装具・卒塔婆などの木製品
瓦「海恵寺」の文字がある軒丸瓦
武士の住まいらしく刀に関する出土物 火縄銃の鉄砲玉も見つかっていたと思います。