「~学校長式辞より~」
2024年、新たな年がスタートしました。
今日こうやって、「3学期始業式の日」を富田中学校の生徒のみなさんや先生方、職員のみなさんと一緒に迎えられたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
1月1日午後4時10分、石川県能登半島で最大震度7の大きな地震が発生しました。今もなお、津波や土砂崩れ、倒壊した建物の下敷となって被災された方、大事な家族の安否さえ分からない方が多く、被害の全容はまだ見えない状況です。今でも大きな余震が続き、命の危険があるなか、消防や警察、自衛隊の方々によって、倒壊した建物に閉じ込められた行方不明者の懸命の捜索や救助活動が続けられています。
みなさんは、この能登半島地震のニュースを見て、どのようなことを感じ、何を考えましたか。
石川県では、いつもなら新学期を迎える今日、小中学校合わせて71校が休校となっており、そのうち43校は学校が被害を受けていたり、避難所になったりして、再開のめどが立っていない状況が続いています。石川県内の400カ所の避難所では、約3万人の方々が避難生活を強いられています。
断水で水も十分に飲めず、顔や手も洗えない、特に被災からこの1週間は、道路が寸断されて、支援物資が思うように届かない、電気もガスもつながらず、寒さに身を寄せ合い、わずかな食べ物を少しずつ分け合って生活するという厳しい状況でした。1週間たった今も、雪が降り積もって物資の運搬がより難しくなり、復旧が困難な状況が続いています。
数日前、大きな被害があった輪島市の輪島中学校の様子が、テレビで放映されていました。輪島中学校のグラウンドの大部分は、地割れが起きて崩れていました。また、収容人数約280人を大幅に上回る1000人近くの人が押し寄せ、体育館だけでは場所が足りず、教室でも多くの方が寝泊まりしている状況でした。
その中で心に残ったのは、自分自身の家も倒壊し被災しているにも関わらず、地域の方々が炊き出しで自主的にお米を炊き、2日間近くほとんど食べ物を口にしていない避難所の人たちに、温かいおにぎりを配っておられた姿です。
珠洲市の中学校の体育館では、避難していた中学生6人が、避難所の高齢者の方たちに声をかけて、エコノミークラス症候群を防ぐために、一緒にラジオ体操やじゃんけんをしていました。参加した人たちがみんな笑顔になって、優しい言葉を掛け合い、その場の空気がぐんと温まっていくのが伝わってきました。
また、避難所にいる中学生たちが模造紙で壁新聞をつくって、体育館の入り口に貼り出していました。「支援物資を大切に使うこと」や「感染症に気を付けて」という呼びかけだったり、「炊き出し美味しかったランキング」など、避難所の生活が少しでも前向きに明るくなるように、話題を工夫して記事にしていました。
新聞を作ったメンバーの一人の中学3年生の男の子が、インタビューの中で「本当に通学できるようになるのかとても不安だし、そもそも受験を受けられるのか不安です。こうやって動いていると、不安がちょっと少なくなります」と答えていました。
今は、これから先のことすら考えられない過酷な現実の中で、不安で押し潰されそうになりながらも、1人1人ができることを考え、困難な状況を乗り越えようと、前を向いて動き始めている中学生のたくましい姿に、本当に胸が熱くなりました。
地震発生直後には、若い青年が速く歩けない近所のお年寄りを背負って、高台に向かう様子がネット上に投稿されていました。避難所まで見知らぬお年寄りを背負って、坂道を送り届けてくれた若者の姿もありました。
こういったニュースを聞くたび、目を覆いたくなるような大きな被害の中でさえ、人の温かさや助け合いに救われ、一筋の希望の光が見えて、生きる勇気が湧いてきます。
今、私たちにできること・・・。
まずは、 「願うこと」
ただひたすらに、被災地の方々に想いを馳せて
1日でも早く、被災された方々のもとに、十分な水や温かな毛布、食べ物が届けられ、安心して暮らせる状態に戻りますようにと。
そして、 「感謝すること」
今もなお、自分の命を削って、懸命の捜索活動や救援活動して下さっている方がいるということ
そして、支えてくださる多くの方々のおかげで、私たちが今、ここに生きているということ
それは、当たり前のようで、実は奇跡のような、かけがえのない時間なのだということ
最後に、 「感じ」「気づき」「考えたこと」を心にしっかりと刻んでおくこと
石川県能登半島で発生した地震の大きな爪痕
被災者の方々の言葉にならない深い悲しみ
明日が見えない中で、懸命に生き抜こうと励まし助け合う方々の姿に、私たちは、何かを「感じ」「気付く」ことが必ずあるはずです。
それぞれに「感じ」「気づき」「考えたこと」を自分の心の真ん中に置いて、かけがえのない中学校生活を大事に過ごしてほしいと願います。
3年生は、いよいよ中学校最後の学期となりましたね。受験の不安や緊張もあると思いますが、皆さんなら大丈夫です。1・2年生も、一緒に過ごしてきた学級の友だちや、担任の先生と同じ教室で過ごせるのも、あと残り2ヶ月です。
被災地の復興を心から願い、支援していくためにも、私たちは歩みを止めるわけにはいきません。
自分の目標にチャレンジできることに、感謝の気持ちを忘れず、前を向いて進んでいきましょう。